こんにちは、インテリアデザイナーのツジチハルです。前回のブログに引き続き、建設業界の2024年問題について、お話しします。
建設業界の残業時間や、1ヶ月の労働日数はとても高い業種に入っています。
こちらも2024年度から罰則が課せられるので、「働き方改革関連法」に適応した労働環境を整備する必要に迫られています。
しかし、現実は非常に厳しいと言われています。
何が問題なのでしょうか?
・人手不足の深刻化・・・人口減少は全ての業種に降りかかる問題ですが、
中でも、建設業就業者数は492万人で、ピーク時の685万人から大きく減少しています。
さらに建設業就業者数のうち、約36%が55歳以上であり、29歳以下は約12%と減少しています。
(国土交通省資料による)
それもあってか、残業時間が多い職種でもあります。(帝国データバンクによる)
・後継者不足・・・若手が少ないということは、後継者を育てたくても育てられないのです。それに職人の熟練の技術を習得するにはそれなりの時間が必要なので、待ったなしです。
建設業者のうち後継者不在は63,4%と帝国データバンクの調べでは発表されています。
実際、私の業者さんでも、高齢の方は多いです。
大工さん、電気屋さん、カーテン施工やさんなど。すでに60歳を超えて延長雇用で
働いてくださっている人に、「3年後、発注はどうしたらいいの?」と聞いても、
「どうするんでしょうねー?」なんて答えしか返ってこなかったりします。
ま、会社が決めることなのでそうとしか答えられないのでしょうが、困ります。
橋やビルや道路など大きな建設業でなくとも、小さなマンションのリノベでも
業者さんは売り手市場です。工事をお願いしたくても、
「次に入れるのは、半年後の○月です」といった感じで、そこをなんとか・・・なんてお願いすることもしばしばです。建築資材の値上がりや前回の配送費の値上がりに加えて、職人手間も上がっています。
例えば3、4年前のリノベ費用とは格段に総予算は上がっているという実感があります。
(私の感覚では30%くらい)
新築やリノベをお考えのお客様には、本当に大きな問題ですよね。
逆に現場側の視点で見ると、本当に技術の必要な仕事ですし、夏のリノベ現場などは
エアコンもないところで毎日蒸し風呂状態で肉体労働されるので、その姿を目の当たりにすると相応の費用をお支払いするのは、当然だという思いも湧いてきます。この方々のおかげで暮らしが成り立っているのですから。
また、下職さんなどは、厚生年金や社会保険に入っていなかったりする方もいるので、
(入っている人もいっぱいいますが)体を壊したら本当に困ることになると思うのです。
そういう不安要素を垣間見たりすると、職人になるという選択ができない若者が多くなるのは致し方ないかと思います。
そんな中、画期的なニュースも目にします。
積水ハウスは若手人材を増やすため、大工さんの採用を来春は2.4倍の95人、
再来年は3.4倍の133人の計画。30代の大工さんなら、現在の年収の1.8倍の900万円に引き上げ、大幅に改善するとしています。(NHK NEWSWEBより)
素晴らしい!
私も大手ハウスメーカーに、長年在籍してました。
大工さんは外注でしたが、社員として抱え込む方が安定しますよね。でも独立した方が稼げるという感じのお給料では抱え込めません。
30代で年収900万だと、もしかしたら成績の振るわない営業職より良いかもしれませんね。そしたら「だったら、自分も大工の方がやりたいな!」って人、正直いっぱいいるのではないでしょうか?
そういう先を見越した英断をした積水ハウスを、私は素晴らしいと思います。腕のいい大工さんのいるメーカーで建てたいと思う人は一定数必ずいると思います。大手がそうなれば、その余波は大なり小なり末端まで波及していくと思います。
家を買う人からしたら、またまた家の価格が上がるー・・・って嘆きたくなりますよね。でも、職人さんが、老後を安定して過ごせないような状況になると結局はその分を社会がなんとかしないといけないので、別な形で私たちに負荷がかかってくるので同じことかもしれません。
そしてここからは全く根拠のない私の個人的な憶測ですが。
なんとなく、大昔は士農工商だった順番が、今は商工農みたいな感じで、営業会社では
ホワイトカラーの営業の方々が頂点にいる感じですが、これからはまた変わるかもしれないですね。AIがホワイトカラーの仕事をやってしまうようになっても、それを具現化できる職人さんがいないと企業は存続できなくなるのでしょうから。(もっと遠い将来はロボットや3Dプリンターが家を建ててしまうようになるのかもしれませんが、そうなるとますます職人が建てた家は価値が倍増するわけです。超富裕層しか住めないかもしれませんね。)
職業に貴賎なし・・・これも差別をなくすというSDGSの一つだと思います。
いわゆるホワイトカラーの人とブルーカラーの人の格差がその価値以上の格差になっているのを、フラットな視線で見直す良い時期なのかもしれませんね。
2024年問題の解決については?
国土交通省などが具体的な策や指標を示していたりします。具体的には現場に何台かのカメラを設置して現場監督は複数の物件を遠隔で管理するなどのデジタル化とか。しかし2024年度には間に合わない!という危機感がいよいよ募ってきています。
暮らしに直結する大問題ですから、多くの人がこういう業界の背景だけでも知ることは大切です。
工事費の値上げや、配送の遅延などに直面すると腹立たしい気持ちだけが沸き起こってしまいそうですが背景を理解することで、納得したり、協力しようという穏やかな気持ちで受け入れる余裕が少しは生まれるのではないでしょうか。
そして、配送業や、建設業や、建築にまつわるあらゆる方々に、皆さんが心からの感謝とリスペクトの眼差しを向けてくださったら、担ってくれる若者だって増えるかもしれません。
実は、私の推しのアーティストが 「MUSIC×CONSTRUCTION」というアーティストの力で建設業のアウターブランディングとインナーブランディングを実現させる企画の、第1弾オリジナル楽曲を発表しました。そんな記事も読んでみてください。
https://creative-land.jp/post-detail/45
https://www.youtube.com/watch?v=hytxMxxM3dM
(ここからは全くの余談ですが、子供の頃は、純粋にトラックの運転手になりたい!とか、大工さんになりたい!って子いたと思うんです。私の甥っ子は鳶職につきたいと小学生の頃言ってました。かっこよく見えたようです。運動神経も良かったので、「おばちゃんは賛成!鳶職でもリーダーになるには、算数や英語もできた方がいいと思うよ!」「わかったぁ!」なんて会話した覚えがあります。でも大抵の子は、大人になるにつれ、いい学校に行っていい会社に入らないと・・・と大人の影響で思うようになってしまいます。
私は3回転職してサラリーマンも長くやってましたので、「この人、絶対サラリーマンに向いてないと思う・・・」(私もか!)とか、営業成績が上がらず精神的な幸福度が低そうな人を沢山見てきました。もしも、素直に自分に向いている仕事や、なりたい仕事に安心してつける世の中になったら、明るい社会になるんじゃないかな、なんて思ったりもしています。
知人のデンマーク人の方が10年ほど前に話してくれたことを今でも覚えています。「僕の友達はゴミ収集車に乗る仕事を選んだよ。なぜなら、その仕事は午後の早い時間に仕事が終わるから。その午後の時間を家族のためや自分の趣味の時間に使うためだと判断して決めたんだ。その友達を僕たちはみんな尊敬しているよ。」とても共感できます。
やっぱり幸福度の高い国ってみんなが自分の幸せを本当に大切にする価値観のある国なんだと思いました。生きにくい世の中を作っているのは自分自身の認識だけだったりするのかもしれませんね。2024年問題を考えながら、そんなことを思いました。
皆さんは、2024年問題、どう捉えられますか?
長くなってごめんなさい。読んでくださりありがとうございました。)
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